任意接種ワクチンは必要なの?

これまでもいくつもワクチンは接種されていると思いますが、その多くは定期接種(自治体が費用負担)で自己負担なく接種しています。

一方で任意接種という自己負担のワクチンは、もしかしたらあまり縁が無い方も多いのかも知れません。

無料の定期接種ワクチンは受けているけど、自己負担の任意接種ワクチンは接種していない、というご家庭も案外多いと思います。

このページでは

  • 任意接種ってなに?定期接種と何が違うの?
  • 本当に必要なものだけが定期接種と国が決めたのではないの?
  • お金を払ってまで任意ワクチンを打つ必要はあるの?
  • 翠こども・耳鼻咽喉科クリニックの任意接種ワクチン費用

などの疑問にお答えします。

インフルエンザワクチンは代表的な任意接種ワクチン

実は身近な任意ワクチンをすでに皆さん接種されています。その代表例がインフルエンザワクチンです。

多くの方がインフルエンザワクチンは接種した方が良い、と自然に理解されていると思います。当院でも秋から冬にかけてインフルエンザワクチン接種を行っていますが、たくさんの方が接種されています。

そして、インフルエンザワクチンは皆さんそれぞれご自身でワクチン代金を負担して接種されています。

それは「お金を払ってでも接種した方が、インフルエンザに罹患しにくかったり、もしも罹患しても症状が軽くなる」という期待に対し「お金を払う価値がある」と理解しているからだと思います。

しかし、なぜか「インフルエンザワクチンは打った方がいい」ということは自然に理解できるけど、「任意ワクチン」と聞くと、なかなか積極的に向き合えない方が多いのが現状です。

定期接種と任意接種の違い

そもそも定期接種と任意接種は何が違うのでしょうか?

まず大前提として定期接種と任意接種ワクチンの重要さに違いはないという点を強調したいと思います。国の法整備が間に合っているかという制度上の違いだけです。

具体的には接種を推奨する法令(制度)と費用負担そして万が一ワクチンによって副反応が生じた際の救済制度の違いです。

さらに任意ワクチンと同様に、ワクチンを接種することで感染や重症化リスクを大きく軽減できるという点も重要です。

その証拠に定期接種ワクチンは時代とともに対象が増え、以前は任意接種であったものが定期接種の対象に選定されています。

具体的には、いまでは当たり前に接種しているヒブ、小児用肺炎球菌、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンが2013年に任意接種から定期接種に選定され、それから水痘ワクチン、B型肝炎、ロタウイルスワクチンも順次定期接種となっています。

つまり、現段階では任意接種であるものが今後定期接種に変わることも十分にあるわけです。

定期接種にならない大きな理由としては、安全性や費用対効果についての国内のデータが十分でないこともありますが、費用を賄う財源が確保されていない、法律の整備が間に合ってないことも大きいようです。

なお、お住まいの自治体によっては任意接種ワクチンの費用を一部負担する地域もありますので市役所や小児科クリニックで確認すると良いでしょう。

【翠こども・耳鼻咽喉科クリニックがある広島市は任意ワクチンへの補助はありません(高齢者のインフルエンザワクチンは除く)、お住まいの自治体での補助の有無はこちらのページをご覧ください】

定期接種と任意接種ワクチンの違い
  • 接種する重要さに全く違いはない
  • 接種を推奨する法律や費用負担の有無、合併症の救済機構が異なるのみ

改めて言いますが、定期接種か任意接種かは、国の法整備が間に合っているかという制度上の違いだけです。

どの感染症ももしも罹患してしまうと大変な合併症を引き起こす可能性があり、なおかつワクチンを接種することでそのリスクを大きく軽減できる疾患です。

定期接種と任意接種の違いを日本小児科学会でも解説しています。こちらもどうぞご覧ください。

任意接種ワクチンは本当に「高い」か?

任意ワクチンが重要だとわかっていても普及しにくい最大の理由として、やはり費用負担は大きいでしょう。

数千円から1万円を超えることもあり、複数になると負担が大きいですよね。では、本当にその費用は高いのでしょうか?

感染症に罹患した場合、まず病院を受診せねばなりません。

急な呼び出しで親は仕事を早退したり、お休みをもらって病院を受診することで、得られるはずだった労働賃金が減ります。また地域や親の所得によっては病院受診の費用負担も生じます。

予防接種の対象である感染症は、感染すると法律で休園・休学が規定されていたり、発熱などの症状により親の付き添いが必要です。

当然その数日から1週間程度、親が付き添いのため仕事を休む必要があり、会社によっては子供の看病手当が出ることもありますが、多くの場合に欠勤という形で労働賃金が減ってしまいますし有給を消化する必要があります。

つまり、もしもかかった場合に金銭面だけを考えても支払う賃金はまず間違いなくワクチン接種代金を大きく上回るはずです。

任意ワクチンは自動車保険と一緒

金銭面以外にもう一つ任意ワクチンが普及しない理由として、

ワクチンを打たなくても感染しないから大丈夫じゃないの?!

という方も多いでしょう。

ここでは代表的な任意ワクチンの対象であるおたふくかぜを紹介します。

おたふくかぜは発熱と頬などが腫れる病気ですが、非常に感染力が高い疾患の一つです。実はその数はとても多く、日本では毎年数十万から100万人程度が罹患しているとの統計があります。

それだけでも十分に恐ろしいですが、おたふくかぜは合併症も心配な病気です。無菌性髄膜炎という合併症も大変怖い上に見逃せないのがムンプス難聴で、おたふくかぜに感染した場合に1,000人に1人程度が発症するとされ、単純計算で毎年数百人から1,000人程度が完全に耳が聞こえない程度の難聴になります。

これを予防するのがおたふくかぜワクチンになります。

おたふくかぜワクチンについては詳しく解説したページもありますのでご覧ください。

また、任意ワクチンは自動車保険に例えることもできます。

車を所有されている場合には自賠責に加え、民間の自動車保険にも加入していますよね。

ご自身の怪我をカバーする意味もありますが、主な目的は対人や対物事故での巨額な賠償金への保険と、人によっては車両保険にも加入していますよね。

そんな自動車保険ですが、多くの方にとって事故は日常的でないため「保険があって良かった」と思う場面は少ないはずです。でも加入しているのは、保険が活躍する場面は少ないけども「万が一のときに備える」ためでしょう。

任意ワクチンも同様に考えることができます。むしろ、自動車保険よりもずいぶんメリットが大きいとさえ言えます。

自動車保険は加入したからといって事故にあいにくくなることも、事故にあった場合に軽症で済むという恩恵は全くありません。

しかしワクチンは接種することで罹患リスクも下がりますし、もしもかかった場合の重症化予防になりますので、自動車保険よりも圧倒的にメリットが大きいとも言えます。

このように考えると任意ワクチンって思ったよりも高くない、と感じられるのではないでしょうか。

もちろん元気が当たり前の我が子が辛そうにしている様子や合併症が万が一にでも起こってしまった場合の不安など健康面への懸念は言うまでもありません。

経済的にも体を守る意味でも、大切な我が子を守るためにもしっかりと任意ワクチンも打って備えることをおすすめします。

接種したい任意接種ワクチン

最後に、接種したい任意ワクチンを紹介します。

まずは1歳になってすぐのおたふくかぜワクチンの1回目です。

MRワクチンなどの定期ワクチンと同時接種がおすすめです。

1歳で接種したいワクチンについては下記ページにまとめています。

次は年長から就学前の1年間におたふくかぜワクチン2回目と三種混合ワクチン、ポリオワクチンです。

就学前に打ちたいワクチンは下記ページにまとめてあります。

最後はインフルエンザワクチンです。

毎年冬のインフルエンザワクチンもやはりしっかり接種して備えたいですね。

おすすめの任意ワクチン
  • 1歳のおたふくかぜワクチン1回目
  • 就学前のおたふくかぜワクチン2回目と三種混合ワクチン、ポリオワクチン
  • 毎年冬のインフルエンザワクチン

このページが少しでも不安を解消する参考になれば幸いです。

定期接種と任意接種のうち、おたふくかぜワクチンとインフルワクチンのご予約はWebからお取りできます(インフルエンザは冬季限定)。

任意接種の三種混合ワクチン、ポリオワクチンと、定期接種対象ワクチンを対象年齢外で接種する(医療職に就職する際に麻疹・風疹ワクチン接種が必要など)場合にはお手数ですがお電話にて承りますのでお電話いただきますようお願いいたします。