このページはおたふくかぜワクチンの解説ページです。おたふくかぜは正確には流行性耳下腺炎と言います。
おたふくかぜワクチンは任意接種の1つです。任意接種とは自己負担(自費)で接種するワクチンです。
自費でお金を負担してまで接種した方がいいの?
という疑問にもお答えします。
おすすめの接種スケジュール
おたふくかぜワクチンは合計2回接種します。
おすすめのスケジュールは1歳の誕生日を迎えてすぐに1回目。そして年長さんから小学校入学前に2回目の追加接種を受けましょう。
1歳の誕生日が来たら打つ定期接種としては五種混合ワクチン(ヒブワクチン)、肺炎球菌ワクチン、MRワクチン、水痘ワクチンの4本があります。任意接種となりますが、おたふくかぜワクチンもぜひ一緒に1歳の誕生日に打ってもらいたいワクチンです。
※令和6年4月1日より5種混合ワクチンが開始となり、今後は1歳時のワクチンとしてヒブワクチンの代わりに五種混合ワクチンを接種するようになっていきます。ただし四種混合+ヒブワクチンで接種を開始した方はスケジュール完了まで原則同じワクチンで接種することになっています。
自費なのに接種した方が良いの?という疑問はページ下でお答えします。
1歳の誕生日を迎えたら打ちたい定期接種・任意接種ワクチンについてはこちらのページで解説していますのでご覧ください。
おたふくかぜワクチンは1歳で1度目の接種を終えても、抗体が低下し感染することがあるため、2回接種が勧められています。
日本では1歳での接種率は上がっているものの、年長から小学校入学前の追加接種率が低いのが現状です。実際おたふくかぜの感染はその70%が3歳から7歳に起こると報告されています。大切な我が子を守るために、また保護者を含め周囲への感染リスクを回避するためにも忘れずに追加接種を受けましょう。
1度目の接種から4週間あければ接種可能ですが、2回目は小学校入学前1年間に接種することが勧められています。定期接種になっているMRワクチンの追加接種も同じ時期ですので、就学前にMRワクチンとおたふくかぜワクチンの追加接種を同時に受けましょう。
年長から小学校入学前までの1年に打ちたいワクチンは4種類あり、こちらのページでも解説しています。
なお、通っている保育園・幼稚園など周辺でおたふくかぜが流行っている場合には初回接種から4週間あければ年長を待たず追加接種も可能です。迷った場合にはどうぞご相談ください。
また、1歳以上の方でおたふくかぜワクチンを一度も打っていないけど打ちたいという方は、1歳以上であれば接種年齢に制限はありませんので、是非気づいた段階で早めに1回目の接種をしましょう。
【接種回数2回】
- 1回目
- 1歳の誕生日すぐに(他のワクチンと合わせて5種類)
- 2回目
- 年長から小学校入学前で追加接種
- 周囲で流行している場合には早期接種可
1 1歳の誕生日がきたらおたふくかぜワクチン接種を
おたふくかぜワクチンの1回目は『1歳の誕生日』を迎えてすぐにでも受けることがおすすめです。1歳の誕生日を迎えたら、定期接種の五種混合ワクチン(ヒブワクチン)、肺炎球菌ワクチン、MRワクチン、水痘ワクチンと一緒に5本同時接種が可能です。5本同時接種に抵抗がある方は、2回にわけて接種することもできます。その場合は先に麻MRワクチン、水痘ワクチン、おたふくかぜワクチンの3本を接種する方法がおすすめです。
2 2回目の接種を忘れた場合は?1回目を遅く接種した場合は?
2回目を忘れてたけど、いまさらでも打った方がいいの?
定期接種になっていないおたふくかぜワクチンは、1歳の初回接種は受けても、2回目の接種を忘れてしまうことが多いようです。
あるいは2回目の接種をしたか覚えていないという方も多いですがワクチンの接種歴は母子手帳に必ず記載があるはずですので、接種歴の有無は母子手帳を確認すれば良いでしょう。
そのため1回は1歳で接種したものの2回目を接種せず、すでに小学校や中学校、高校に入学するような年齢になっている場合、追加接種は受けた方が良いのだろうか?と思う方も多いかもしれません。この場合
- 採血して抗体を評価→抗体が不十分(感染歴がない)なら追加接種をする
- 採血せず→追加接種をする
という2通りの方法があります。
症状がなくても実は感染していた(不顕性感染)可能性もあるため、採血をして抗体を測定すれば感染したことがあるか判定できます。そのため採血をして感染歴がないことを確かめ追加接種を受ける、という方法でも問題ありません。
ただおたふくかぜの採血結果には数日かかるので①採血をする日、②結果を聞く日、そして③ワクチンを打つ日、と3度の受診が必要になります。また、保険の仕組み上、抗体があるか確認するための採血は保険診療ではなく自費診療となるため費用が高額になることも難点です。
一方で、すでに感染歴がある方が追加接種を受けても接種に伴う痛みや腫れなどの一般的な副反応以外に大きなデメリットはないことが知られており、採血をすることなく追加接種を受けるという選択もあります。
何歳になっても追加接種を受けることでワクチンの恩恵は十分受けられるため、明確に感染したという診断や接種歴がない場合には追加接種を考えてみてください。
また、1回目の接種を1歳ではなく遅れて接種した場合、2回目はいつ接種すればいいですか?という疑問については、28日以上あければ2回目も接種可能としか決まりはありません。周囲の流行状況にもよりますが、当院では半年~1年あけて2回目の接種をお勧めしています。
1回目を年中さんまでに接種した方は、2回目は年長の学年での接種で問題ないでしょう。
3 妊娠前におたふくかぜ接種を
もしも妊娠初期・早期におたふくかぜに罹患すると流産の可能性が高くなることが知られています。
そのため妊娠の可能性がある時期の接種を控えることはもちろん、もしもワクチン未接種かつおたふくかぜに罹患したことがないという女性は妊娠前におたふくかぜを接種しましょう。当院でも接種可能ですのでご希望の方はご相談ください(任意接種)。
接種で回避できる病気
おたふくかぜの症状は?
おたふくかぜは、正式には流行性耳下腺炎あるいはムンプスと言い、ムンプスウイルスというウイルスによる感染症です。
おたふくかぜの主な症状は、ほほ(耳下腺)やあごの下(顎下腺)など唾液腺の腫脹と痛み、発熱です。
腫れは1箇所だけのこともありますし、時間差で複数箇所腫れることもあります。腫れた部位は比較的強い痛みを伴うことが多いです。
一方で感染者の約3人に1人は、腫脹が全く無く軽度の発熱のみ、さらに不顕性感染といって全く症状がない例もあります。
年齢が上がるとともに不顕性感染下がり、1歳では80%、4歳では10%が不顕性感染とされています。
腫れ自体は数日でピークを迎え、1週間程度で消退していきますが、場合によっては発熱や頭痛、倦怠感なども伴います。
おたふくかぜは感染力が非常に高く、日本では毎年数十万から100万人程度が罹患しているとされている身近な疾患です。
おたふくかぜは合併症が怖い
「頬が腫れてお熱が出る軽い病気」というイメージを持つ方が多いおたふくかぜですが、実は怖いのが合併症です。
主な合併症が髄膜炎、難聴です。さらに成人が罹患した場合に怖いのが精巣炎・卵巣炎です。
まず髄膜炎は症状が出現した感染者の10人から100人に1人に発症すると言われています。軽症の場合が多いですが、死に至ることもある重篤な脳炎や脳症を合併する場合もあります。
おたふくかぜによる難聴はムンプス難聴と呼ばれ、典型的には片方の耳の聴力を完全に失うなど高度難聴となります。ムンプス難聴は5歳から9歳に多いとされ、片方だけが聞こえないことを本人が自覚せず、発見が遅れることも多いのが実情です。
ワクチンが普及していない時代を過ごした高齢者の中には「幼少期から片方の耳が聞こえない」という方は比較的多く、ムンプス難聴も多く含まれているのではないかと推察されます。ムンプス難聴は1,000人に1人程度の発症割合とされています。
おたふくかぜは大人にとっても脅威
おたふくかぜワクチンが今よりも啓発されていない時期にワクチンを接種されることなく幼少期を終え成人になったのがいまのお父さんお母さん世代です。
お子さんがおたふくかぜに罹患した場合、おたふくかぜは感染力がとても強いため周囲の家族にも感染リスクがあります。ワクチン未接種あるいはおたふくかぜに罹患したことがない成人が初めておたふくかぜに罹患した場合、子どもよりも重症化しやすいとされ、さらに精巣炎や卵巣炎と言った不妊の原因となる合併症をの危険性が高まります。
男性に起こる精巣炎・睾丸炎は20〜30%と高確率で、卵巣炎は7%程度とされています。
いずれも我が子がならない保証は全くありません。髄膜炎は一般的な想像より比較的頻度が多い合併症で、周囲への感染リスクも高いのがおたふくかぜです。
おたふくかぜワクチンの予防効果
実は怖いおたふくかぜですが、ワクチン接種による予防や重症化を防ぐことができますので追加接種までぜひ接種を受けましょう。
おたふくかぜワクチンを1回定期接種にしている国では発症者が約90%減少し、2回定期接種にしている国では99%減少しているとされています。
またワクチンを接種していてもおたふくかぜに罹患することがありますが、その場合も例えば無菌性髄膜炎の罹患率は0.03〜0.06%と極めて低いことが知られています。
おたふくかぜワクチンの安全性と副反応
おたふくかぜワクチンの主な副反応は接種後10日〜2週間程度でおたふくかぜに似た症状が出現することです。具体的には頬やあごのあたりが腫れることあります。多くは軽症で自然に回復しますので安心してください。
ワクチン接種でも無菌性髄膜炎が起こりうることが報告されていますが、自然感染(ワクチンを接種せずに感染)が10人〜100人に1人と比較的高率なのに対し、ワクチン後の発症は40,000人に1人程度とされています。またその場合も自然感染での無菌性髄膜炎に比べさらに軽症が多いとされています。
さらに極めて稀な合併症として100万人に数人に脳炎が起こることがあると報告されていますが、自然感染では1万に30人程度とされており、ワクチンを打たずに脳炎になる可能性よりもワクチンを接種して脳炎になる可能性の方が圧倒的に低く、軽症であることが知られています。
- 接種後10日〜2週間程度で頬やあごの下が腫れることがある;ほとんどが自然回復
- 稀な合併症が報告されるが、自然感染よりも圧倒的に低く、軽症
任意接種なのに接種した方が良いの?
そもそもおたふくかぜワクチンは任意接種で自己負担であるが故に接種率が低いと考えられます。
1. 集団保育施設での感染リスクが高い
2. ワクチン接種によって重症化を防げる
3. 難聴などの合併症を予防できる
4. 将来的に経済的な負担が軽減される
おたふくかぜワクチンの接種を推奨する理由を簡単にまとめるとこの4点ですが
- 定期接種ワクチンと定期接種ワクチンの違い
- 任意ワクチンは接種した方が良いか?
- 任意ワクチン費用は高いか?
などの疑問に対し詳しく解説しているページもありますのでどうぞ参考にしてください。
さらに詳しく知りたい方
さらにおたふくかぜワクチンについて知りたい方は日本小児科学会やこちらのページ、あるいは国立感染症研究所のサイトをご覧ください。2022年に報告された厚生労働省の資料は医療関係者向けですが非常に内容が充実しており興味がある方はどうぞご覧ください。
おたふくかぜワクチンの接種費用
ワクチン名 | 税込み価格 |
おたふくかぜワクチン(1回目、2回目ともに) | 5,000円 |