このページは五種混合ワクチンの解説ページです。
五種混合ワクチンのスケジュール、接種により回避できる病気、副反応や五種混合ワクチン特有の「四種混合ワクチンですでに開始している場合はどうしたら良い?」という疑問にもお答えします。
生後2ヶ月での五種混合ワクチンは定期接種の1つです。定期接種とは公費負担で自己負担なく接種できるワクチンです。
2024年2月以降に出生された赤ちゃんが対象です。
おすすめの接種スケジュール
五種混合ワクチンは、ジフテリア(D)、百日せき(P)、破傷風(T)、ポリオ(IPV)、ヒブ(Hib)という5つの感染症に対する混合ワクチンです(ジフテリアD、百日せきP、破傷風Tの3種混合ワクチンをDPTワクチンと呼ぶため、五種混合ワクチンをDPT-IPV-Hibと表記することがあります)。
五種混合ワクチンは1回の接種では十分な免疫を作ることができないため生後2ヶ月から4回接種することが必要です。
生後2か月が来たらロタウイルスワクチン、肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ワクチンと同時接種を受けましょう。
従来は四種混合ワクチンとヒブワクチンをそれぞれ別に接種していましたが新たにヒブワクチンがあらかじめ混合された五種混合ワクチンとなりました。
それぞれ4回ずつ合計8回接種していたのが合計で4回に減り、赤ちゃんの負担が大きく軽減しました。
*すでに四種混合ワクチン+ヒブワクチンで接種を開始されている場合には2回目以降の接種も原則として同じワクチンを接種してください。
【接種回数4回】1-3回は生後2ヶ月から1歳、4回目は1歳半頃が目安
- 1回目
- 生後2ヶ月(他のワクチンと5種類同時接種)
- 2回目
- 1回目から3〜8週間隔で2回目
- 3回目
- 2回目から3〜8週間隔で3回目
- 4回目
- 3回目から1年後(12〜18ヶ月後、標準的には1年後)で4回目
- 【追加接種】
- 就学前と11歳ころの三種混合の追加接種が日本小児科学会でも推奨されています(任意接種)
接種で回避できる病気
1 ジフテリアとポリオ
五種混合ワクチンは、5つの感染症に対するワクチンです。
このうちジフテリアとポリオについては、幸いにもワクチンの普及により近年日本で感染の報告はありません。
しかし一昔前までは日本でも多くのこどもさんが罹患し、死亡に至る例や重篤な合併症をきたす例がたくさん認められました。
また海外ではいまだに感染の報告もある感染症で、なおかつワクチンがとても有効な感染症ですので、ぜひ接種を受けましょう。
2 破傷風
破傷風は、とても小さな傷からでも感染してしまうことがある危険な感染症です。筋肉の神経回路を侵すため、感染した場合30%(10人に3人)が死亡するとても重篤な感染症です。
幸いワクチンのおかげで感染症は減っていますが、世代的に接種を受けていない中年以上を中心に国内でも感染者が報告されています。
またワクチン接種を受けなかった乳幼児の感染の報告もあります。
乳幼児期の4回接種と、抗体(ワクチンの効果)が落ちる11歳頃に追加接種を受けましょう(ジフテリアとの二種混合ワクチン (定期接種)と、百日咳を含む三種混合ワクチン混合ワクチン(任意接種)があります)。
3 百日咳(ひゃくにちぜき)
百日咳は、とても感染力の強い感染症で、家族間や職場での集団感染を起こすこともあります。
幸い大人では軽症ですが、6ヶ月以下、特に3ヶ月以下の乳児がかかった場合には重篤化しやすいとされています。
最初は鼻水と軽いせきが出て、かぜのような症状を示し、そのうち短い咳が止まらず息ができないほどになることがあります。2〜3ヶ月続くこともあるため百日咳と呼ばれています。
3ヶ月以下の赤ちゃんだと呼吸をする力が弱いため、咳で息ができず無呼吸になり、窒息してしまうこともある重篤な感染症です。
ワクチンで予防できる病気ですので、生後2ヶ月から五種混合ワクチンを接種しましょう。
4 インフルエンザ桿菌(ヒブワクチン)
ヒブワクチンはインフルエンザ桿菌(かんきん)という冬のインフルエンザウイルスとは全く別の細菌に対するワクチンです。
細菌性髄膜炎、急性喉頭蓋炎などの重篤な感染から赤ちゃんを守ってくれるワクチンです。
ヒブワクチンについては別ページで詳しく解説しています。
ワンポイント-追加接種のすすめ-
2歳頃までに接種したワクチンの抗体も、その後4−5年経過することで低下することが知られており、例えば百日咳は日本でも毎年8,000〜10,000人程度は感染していると報告されています。
2018年から2019年の報告では、百日咳に罹患した患者の6割が小中学生で、そのうち8割が乳幼児期の4回の定期接種をきちんと接種されていることがわかりました。また9歳時点で十分な百日咳の抗体を有しているのは30%未満という驚きの報告があります。これはつまり、2歳までの乳幼児期の4回の定期接種のみでは完全に感染から回避できないことを示しています。
この報告を受けて日本小児科学会は就学前と11〜12歳での百日咳ワクチンの追加接種を推奨しています(ただし百日咳以外の抗体も低下すること、四種混合の任意接種は国から承認されておらず三種混合ワクチンとポリオワクチンを任意接種(自費)で代用することになります)。
就学前の追加接種については5~6歳(小学校入学前)にMRワクチン(麻疹・風疹ワクチン)の定期接種がありますので、任意接種(自費)にはなりますがMRワクチンと同時に三種混合ワクチン(ジフテリア・破傷風・百日咳)を接種することをお勧めします。
11歳は定期接種(無料)として二種混合(ジフテリア・破傷風)がありますが、このままだと百日咳に対する抗体が低下したままなので、任意接種(自費)にはなりますが、定期接種の代わりに百日咳ワクチンを含んだ三種混合ワクチンを接種する方法もあり、多くの医療機関でも実施されています。
どの病気も耳慣れない病気ですが、百日咳は実は毎年1万人程度も罹患することもある身近な感染症ですし、他の感染症ももしもかかってしまうと大変な病気ばかりです。幸い追加接種でかなりリスクを軽減できますので大切なお子さんを守るためにも乳幼児期の定期接種に加え、ワクチンの効果が落ちる5~6歳(小学校入学前)と11歳頃に追加接種を検討しましょう。
翠こども・耳鼻咽喉科クリニックでは三種混合ワクチンの追加接種も可能です。Webからの予約はできず、お電話にて予約を承りますのでお気軽にお電話ください。
追加接種については小児科学会のページもご覧ください。
五種混合ワクチンの安全性と副反応
五種混合ワクチンは発売直後のため四種混合ワクチンの副反応を主に示します。接種開始にあたり臨床試験が実施され副反応や効果に遜色ないと確認されており、これまでの四種混合ワクチンと同等という理解で良いでしょう。
最も一般的な副反応は接種部位の腫れと痛み(5~80%)
発熱は5~20%
いずれも自然に回復することが多い
アナフィラキシーショックという重篤なアレルギー反応によるショック状態は100万人に1人以下と極めて稀
いずれの症状も2~3日以内に自然軽快することが多いですが、接種部位のしこり・腫脹は1~2週程度続くことがあります。
また2回目以降、接種部位の局所反応(腫脹・発赤)が強まることがありますが、数日以内に自然軽快します。稀に腕全体が腫れてしまう場合がありますが、その場合には当院までご連絡ください。
交互接種、異なるメーカーの接種について
お子さんがすでに四種混合ワクチン+ヒブワクチンで接種を開始されている場合には2回目以降の接種も原則として同じワクチンを接種することになります(異なるワクチンを接種することを交互接種と呼び、一般的に推奨されません)。
また五種混合ワクチンは2つメーカーから発売されています。現在のところ同一メーカーのワクチンが望ましいとされていますので、接種医療機関を途中で変更する場合にはご注意ください。メーカー同士で研究を行っている段階のようですので続報が出れば記事内容を更新します。