このページはMRワクチンの解説ページです。
MRワクチンは定期接種の1つです。定期接種とは公費負担で自己負担なく接種できるワクチンです。
MRワクチンとは?
MRワクチンとは、麻しん(ましん)と風疹(ふうしん)に対するワクチンです。
麻しんと風疹の英名がmeals、rubellaと表示され、2つのワクチンを混合して接種することから頭文字をとってMRワクチンと呼ばれています。
おすすめの接種スケジュール
MRワクチンの定期接種は2回です。
1歳になったらすぐに1回目と、小学校入学前1年の間(保育園・幼稚園年長)に2回目を打ちましょう。
【接種回数2回】
- 『1歳の誕生日』を迎えたらすぐに接種しましょう
- 小学校入学前1年の間(保育園・幼稚園年長)に2回目
1 MRワクチン接種のワンポイント
MRワクチンの1回目は『1歳の誕生日』を迎えてすぐにでも受けることがおすすめです。
なお1歳の誕生日を迎えて打つべきワクチンはMRワクチンを含め5種類あります。
まずMRワクチンと同様に初回接種である水痘ワクチンとおたふくかぜワクチンです。
続けてすでに接種を開始している五種混合ワクチン(あるいはヒブワクチン)、肺炎球菌ワクチンの追加接種です。
このうちおたふくかぜワクチンは任意接種で自費になりますが、もしも重症化した場合には難聴や無菌性髄膜炎などを起こしかねない感染症ですので、ぜひ接種しましょう。
1歳の誕生日を迎えてすぐに5種同時接種がおすすめですが、5本同時接種に抵抗がある方は、2回にわけて接種することも可能です。その場合は先にMRワクチン、水痘ワクチン、おたふくかぜワクチンの3本を接種する方法がおすすめです!
1歳で打ちたいワクチンについては別ページで詳しく解説しています。
2 MRワクチン接種のワンポイント
もしも1歳未満で麻しん流行国や地域に渡航する場合には生後6か月以降であれば接種できますが、この場合は免疫の定着が不十分なので0回目と計算し、改めて1歳以降に通常通り2度の接種を受けましょう。
この0回目接種は任意接種のため自費にはなりますが、翠こども・耳鼻咽喉科クリニックでも接種可能です。お気軽にご相談ください。
3 MRワクチン接種のワンポイント
妊娠20週までにお母さんが風疹に感染すると、心臓疾患、発達障害、聴力障害など重篤な症状を持って生まれてくる(先天性風しん症候群)可能性があるため、万が一お母さん自身が2回接種を終えていない場合は、生まれてくる赤ちゃんを守るため必ず2回接種を終えましょう。MRワクチンは生ワクチンのため妊娠中は接種できません。妊娠を考えている方は妊娠前にワクチンを接種しましょう。なお、ワクチン接種後は少なくとも2か月間の避妊が必要になります。
また30代〜50代の男性の中には全くワクチンを接種したことがない世代が含まれており、実際に風疹報告の7割以上が男性で、そのうち8割以上が20代~40代の方です。先天性風しん症候群を予防するためには、妊婦さんの周りにいる男性も予防接種が重要です。
翠こども・耳鼻咽喉科クリニックでは大人の方へのMRワクチン任意接種(自費)も可能ですのでお気軽にご相談ください。
自費での接種費用:8,500円(令和6年1月時点)
接種で回避できる病気と予防効果
麻しん(ましん)
麻しんは「はしか」とも呼ばれる感染症です。
なぜ「はしか」と呼ばれるかについては諸説あるようですが、一説には、はしかという植物に触れた時に感じる「ちくちくと痛がゆい」「こそばい」という症状を「はしかい」と表現するようで、麻しんに感染した時に同様の症状を呈すことからはしかと呼ばれるようになったそうです。
麻しんウィルスに感染すると、熱と鼻水、せき、目やになどかぜと似た症状が出ます。熱が一旦下がっても再び39度台の発熱が起こり、口の中に「コプリック斑」と呼ばれる麻しん特有の白いブツブツがみられ、その後皮膚に赤いぶつぶつが出現し、全身に広がっていきます。
合併症が起きなければ1週間〜10日程度で改善しますが高熱が1週間程度も続きます。
また麻疹は非常に感染力が強いことでも知られている病気です。免疫を持っていない人が感染すると100%発症するとも言われています。
麻しん(ましん)の合併症
麻しんは合併症が多い感染症で年齢に関係なく30%程度に合併症が起こるとされています。
麻しんの合併症は中耳炎、下痢などの他、肺炎と脳炎があります。
そのうち肺炎と脳炎により、麻しんはかつて、かかってしまうと生きるか死ぬかわからない病気とされるほど恐れられていました。
医療が進んだ現代でも残念ながら死に至ることもあり(1000人に1人程度)、ワクチン接種が不十分だった2000年前後までは日本でも毎年約20〜30万人が感染、20〜30人死亡していたと推定されています。
さらに麻しんに感染して数年〜10年後に重篤な脳炎にかかる亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という合併症もあり、残念ながら有効な治療法は確立されていません。特に2歳以下で麻しんにかかった場合にリスクが上がるとされています。
日本ではワクチン接種により感染者は大きく減少しましたが、2024年にも関東を中心に麻疹に感染したというニュースが飛び交っていました。これは麻疹の追加接種ができていない人多いことと、海外からの感染症の流入によるものとされています。最近外国からの輸入感染例が増えており、さらなる感染拡大も懸念されます。しっかりと追加接種まで受けて備えましょう。
風疹(ふうしん)
風疹の症状は、発熱後に首や耳の後ろのリンパ節の腫れが出て、体に赤い発疹(淡い色のブツブツであることも)の3つが主な特徴です。
発熱は3~4日程度がほとんどですが、全く症状がでない不顕性感染の方も15~30%程度とされています。
風疹も麻疹ほどではないにしろ感染力が強い病気と知られています。
風疹(ふうしん)の合併症
風疹は不顕性感染の方も多い上、ほとんどの方は軽症で済みますが、2000人~5000人に1人に血小板減少性紫斑や脳炎が起こることがあります。
血小板減少性紫斑病は、血小板という出血を止める成分が減ってしまい、出血が止まりにくくなる病気です。
脳炎は脳の炎症で、けいれんや意識障害、死に至ることもある重篤な合併症です。
また風疹の特徴的な合併症として先天性風しん症候群があります。
これは妊娠20週までの妊娠初期にお母さんが風疹に感染すると、生まれてくる子どもが心臓疾患、発達障害、聴力障害など重篤な症状を持って生まれてくる(先天性風しん症候群)可能性が高いというものです。
2010年代初頭に日本でも風しんが流行し、45人の赤ちゃんが先天性風しん症候群となり、うち11名が1年以内に死亡しています。
妊娠を考えている方で風疹にかかったことがない方やかかったかどうかはっきりしない方、ワクチンの2回接種歴がない方は、生まれてくる赤ちゃんを守るために妊娠前にワクチンを接種しましょう。また30代~50代の男性は特にワクチン接種率が低いことで知られています。成人発症の風疹は子どもよりも重篤化するケースが多いため、ワクチン未接種の方は接種しましょう。
ワクチンの予防効果
MRワクチンは2回接種ですが、1回目の接種で95%、2度目の接種で99%免疫を獲得すると言われています。95%といっても20人に1人は免疫が獲得できないことを意味しますので、大切な赤ちゃんを守るためにもしっかり2回接種を行いましょう。
また稀にワクチンが接種後でも麻疹や風疹に罹患する場合もありますが、ワクチン未接種に比べて重症化するリスクが軽減し、周囲への感染力も弱いことが知られています。
MRワクチンの安全性と副反応
MRワクチンは2回接種ですが、副反応のほとんどは1回目接種後に起こり、2回目接種後には少ないとされています。
1回目接種後5~10日以内に、2割程度の方が発熱することがありますが、数日以内に自然解熱しますので心配はいりません。
また発熱と同じタイミングで発疹が出る方が数%います。発熱に伴いけいれんが起こる可能性が0.3%あり、けいれん発作が出現した場合には当院を含めた医療機関に緊急で受診してください。
ワクチン接種部位が赤く腫れることもありますが、ほとんどの場合自然に改善しますのでそのまま様子をみて大丈夫です。万が一肘を越えて腫れる場合は、接種した医療機関へご連絡ください。
MRワクチンは麻疹と風疹ワクチンの混合ワクチンですが、単独接種に比べて副反応が増えることはありませんので安心してください。
【1回目接種後5~10日ころ】
- 発熱(2割程度)→多くが自然解熱
さらに詳しく知りたい方
日本小児科学会やこちらのページも大変わかりやすいので参考にしてみてください。
さらに詳しく知りたい方は厚生省の解説ページも御覧ください。