このページは四種混合ワクチンの解説ページです。
生後2ヶ月での四種混合ワクチンは定期接種の1つです。定期接種とは公費負担で自己負担なく接種できるワクチンです。
四種混合ワクチンと五種混合ワクチンの違い
四種混合ワクチンは、ジフテリア(D)、百日せき(P)、破傷風(T)、ポリオ(IPV)という4つの感染症に対する混合ワクチンです(そのためDPT-IPVと表記することがあります)。2024年3月までは四種混合ワクチンとヒブワクチンを別々にそれぞれ4回ずつ接種するのが標準でした。しかし2024年4月以降は四種混合ワクチンとヒブワクチンが混合された五種混合ワクチンが始まり接種開始されています。
ただ、すでに四種混合ワクチンとヒブワクチンで接種を開始した2024年1月以前に出生した赤ちゃんは途中で五種混合ワクチンへ切り替える(交互接種と言います)ことは原則認められておらず、四種混合ワクチン、ヒブワクチンをそれぞれ接種完了することになっています。
五種混合ワクチンについてはこちらのページで解説しています。
おすすめの接種スケジュール
四種混合ワクチンは1回の接種では十分な免疫を作ることができないため生後2ヶ月から4回接種することが必要です。
生後2か月が来たらロタウイルスワクチン、ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ワクチンと同時接種を受けましょう。
【接種回数4回】1-3回は生後2ヶ月から1歳、4回目は1歳半頃が目安
- 1回目
- 生後2ヶ月(他のワクチンと5種類同時接種)
- 2回目
- 1回目から3〜8週間隔で2回目
- 3回目
- 2回目から3〜8週間隔で3回目
- 4回目
- 3回目から1年後(12〜18ヶ月後、標準的には1年後)で4回目
- 【追加接種】
- 就学前と11歳ころの追加接種が日本小児科学会でも推奨されています(任意接種)
接種で回避できる病気
1 ジフテリアとポリオ
四種混合ワクチンは、4つの感染症に対するワクチンです。
このうちジフテリアとポリオについては、幸いにもワクチンの普及により近年日本で感染の報告はありません。
しかし一昔前までは日本でも多くのこどもさんが罹患し、死亡に至る例や重篤な合併症をきたす例がたくさん認められました。
また海外ではいまだに感染の報告もある感染症で、なおかつワクチンがとても有効な感染症ですので、ぜひ接種を受けましょう。
2 破傷風
破傷風は、とても小さな傷からでも感染してしまうことがある危険な感染症です。筋肉の神経回路を侵すため、感染した場合30%(10人に3人)が死亡するとても重篤な感染症です。
幸いワクチンのおかげで感染症は減っていますが、世代的に接種を受けていない中年以上を中心に国内でも感染者が報告されています。
またワクチン接種を受けなかった乳幼児の感染の報告もあります。
乳幼児期の4回接種と、抗体(ワクチンの効果)が落ちる11歳頃に追加接種を受けましょう(ジフテリアとの二種混合ワクチン (定期接種)と、百日咳を含む三種混合ワクチン混合ワクチン(任意接種)があります)。
3 百日咳(ひゃくにちぜき)
百日咳は、とても感染力の強い感染症で、家族間や職場での集団感染を起こすこともあります。
幸い大人では軽症ですが、6ヶ月以下、特に3ヶ月以下の乳児がかかった場合には重篤化しやすいとされています。
最初は鼻水と軽いせきが出て、かぜのような症状を示し、そのうち短い咳が止まらず息ができないほどになることがあります。2〜3ヶ月続くこともあるため百日咳と呼ばれています。
3ヶ月以下の赤ちゃんだと呼吸をする力が弱いため、咳で息ができず無呼吸になり、窒息してしまうこともある重篤な感染症です。
ワクチンで予防できる病気ですので、生後2ヶ月から四種混合ワクチンを接種しましょう。
ワンポイント-追加接種のすすめ-
2歳頃までに接種したワクチンの抗体も、その後4−5年経過することで低下することが知られており、例えば百日咳は日本でも毎年8,000〜10,000人程度は感染していると報告されています。
2018年から2019年の報告では、百日咳に罹患した患者の6割が小中学生で、そのうち8割が乳幼児期の4回の定期接種をきちんと接種されていることがわかりました。また9歳時点で十分な百日咳の抗体を有しているのは30%未満という驚きの報告があります。これはつまり、2歳までの乳幼児期の4回の定期接種のみでは完全に感染から回避できないことを示しています。
この報告を受けて日本小児科学会は就学前と11〜12歳での百日咳ワクチンの追加接種を推奨しています(ただし百日咳以外の抗体も低下すること、四種混合の任意接種は国から承認されておらず三種混合ワクチンとポリオワクチンを任意接種(自費)で代用することになります)。
就学前の追加接種については5~6歳(小学校入学前)にMRワクチン(麻疹・風疹ワクチン)の定期接種がありますので、任意接種(自費)にはなりますがMRワクチンと同時に三種混合ワクチン(ジフテリア・破傷風・百日咳)を接種することをお勧めします。
11歳は定期接種(無料)として二種混合(ジフテリア・破傷風)がありますが、このままだと百日咳に対する抗体が低下したままなので、任意接種(自費)にはなりますが、定期接種の代わりに百日咳ワクチンを含んだ三種混合ワクチンを接種する方法もあり、多くの医療機関でも実施されています。
どの病気も耳慣れない病気ですが、百日咳は実は毎年1万人程度も罹患することもある身近な感染症ですし、他の感染症ももしもかかってしまうと大変な病気ばかりです。幸い追加接種でかなりリスクを軽減できますので大切なお子さんを守るためにも乳幼児期の定期接種に加え、ワクチンの効果が落ちる5~6歳(小学校入学前)と11歳頃に追加接種を検討しましょう。
翠こども・耳鼻咽喉科クリニックでは三種混合ワクチンの追加接種も可能です。Webからの予約はできず、お電話にて予約を承りますのでお気軽にお電話ください。
追加接種については小児科学会のページもご覧ください。
四種混合ワクチンの安全性と副反応
四種混合ワクチンの副反応は以下の通りです。
【全身症状】2~8%以下(100人中2~8人以下)
- 発熱
【局所症状】10~30%(100人中10~30人)
- 接種部位の腫れ・しこり、発赤
100万人に1人以下、極めて稀
- アナフィラキシーショック(思いアレルギー反応によるショック状態)
いずれの症状も2~3日以内に自然軽快することが多いですが、接種部位のしこり・腫脹は1~2週程度続くことがあります。
また2回目以降、接種部位の局所反応(腫脹・発赤)が強まることがありますが、数日以内に自然軽快します。稀に腕全体が腫れてしまう場合がありますが、その場合には当院までご連絡ください。